プロメテウスの罠(朝日新聞特別報道部 著)
この本は朝日新聞のコラム「プロメテウスの罠」を書籍化したものである。前々からWEB上で話題になっていたので(特に気象研のくだりが気になっていた)、購入してみた。
特に関心のあった気象研究所に関する記述(第三章)では、
の2点が問題として取り上げられていた。気象庁側の言い分としては*1、
- モニタリングの予算が不足しているので、気象庁の放射能観測の研究予算を回してほしいと文科省から要請があった
- 論文は記述に問題があって、その修正に字数の制限等から応じられなかったため、当該研究者が自主的に共著者を降りた
とのことである。
話は本から逸れるが、長官の記者会見について。防災情報に関してはシングルボイスが重要というのも確かに1つの考え方かもしれないが、個人的には持っている情報はできるだけ出して欲しい。情報に対して取捨選択して判断するのは国民で、政府機関ではない。きちんとその情報が持つ意味を、専門用語を抜きにして示せば理解されるはず。もっと国民を信頼して欲しいものだ。
第五章は震災発生から5日間のドキュメント。官邸、保安院、東電の間で十分な意思疎通がとれず、混乱した状況が詳細に記述されている。読んでいて気になったのは、官邸に居る人間の中で専門性を持った人間が少なかった点。これでは、技術的な問題に対応するのは難しいだろう。特に、保安院の幹部で原子力を専門とする人間が居ないのは驚きだった。